私の会社でWebサイト制作を業務として扱い始めたのは1999年頃でした。
印刷会社としては、そんなに出遅れたわけでもなく、むしろ少し早かった方ではないかと思います(あくまで印刷会社としてですが)。
サイトを仕事にし始めてから15年以上が経ちました。
その過程は、ずっと理想のCMSを求めていた15年と言っても過言ではなく、ここで一度どんな風に関わってきたのか、まとめてみたいと思い、この記事を書くことにしました。ただし正確な年数とか日付とか、覚えているわけじゃないんで、その点はご容赦を。
実は最初から「Webサイトは発信者自身が自分で更新するもの」という考えでやってきました。当時はWebサイト制作をする部署は、私1人でしたから私のこだわりが、そのまま会社の方針になったようなものですけど。
うちの会社は非営利団体のお客様が多いので、資金的にも厳しくネット上で情報発信はするけど、何か物やサービスを売るというサイトは殆どありませんでした。なので、更新費用がなるべく発生しなくて済むように、自分で更新できるスタイルを薦めていましたし、ニュースリリース的なコンテンツ(ブログ的とも言える)が、主コンテンツというサイトが多かったので、そういうスタイルには道理がありました。
一般的にホームページビルダーや、GoLive、PegeMill(懐かしい!)などを使ってHTMLを作成・編集しFTPでサーバに上げて更新するというスタイルが主流だったと思います。余談ですがPageMillは軽量でサクサク動いて大好きでした。テーブルの横幅は指定できるけど、縦幅は指定できないなど、テーブルレイアウトには、もってこいのソフトでした(^^)。DTPあがりの私にとって、テーブルレイアウトはわかりやすい仕組みでした(遠い目)。
そして静的HTMLで作ったページの更新だけ、原稿をもらい制作し更新していました。なにせ1人しかいない時期が長かったですから、複数のサイトの更新を1人で受け持つわけにはいかないという事情も背景にはありました。
目次
●最初は日記式掲示板から
最初のうちはブログという言葉さえない時期でしたから、Perlで書かれた掲示板のCGIプログラムを使ってました。複数で書き込みあう掲示板ではなく、ウェブ日記と言われるような、投稿ができるのは管理者だけで、それ以外の人は見ることしかできないというタイプのものでした。
ここにニュースリリース的な投稿をしていってもらいました。ただ掲示板システムであり、今のようなサイト全体のデザインに合わせるということも考慮されていなかったので、本体サイトから日記式掲示板へのリンクが張られているだけでした。
●aシリーズを使っていた時期
次に地元の制作会社「アップルプル」という会社が開発していた a-column(エイコラム)というCGIプログラムを使いました。今では「アップルプル」という会社は「a-blog CMS」というCMSの提供元として全国的も有名ですが、この「a-blog CMS」の前身とも言えるものが、「a-column」や「a-news」というCGIプログラムの「aシリーズ」でした。
ブロック単位で文字と写真を入力し、それを積み重ねてページ全体の記事を作っていくという考え方は、とてもわかり易く、お客様からも好評でした。
この考え方は、自社でCMSを開発するときに、大いに参考にさせて頂きました。
●初の自社開発CMS「Self-Update」
「a-column」はとてもよかったのですが、やはりカスタマイズや機能を付加しようとした場合、当時は「アップルプル」さんに開発をお願いするしかなく、開発を頼めばそれなりのお金がかかることもわかってきました。
そこで、だったら自分のところで作ってしまった方がいいんじゃないかということになり、社内でPerlに詳しいエンジニアに作ってもらったのが「Self-Update」というCMS(当時は更新プログラムと言っていました)。
印刷会社なので、テキストデータは頻繁に扱いますし、自動組版的な仕組みも導入していましたので、テキスト処理に強いPerlについて、一定のスキルを持った人材がいたのは幸運でした。
まだサイト全体を構築できるような機能はなく、ニュースリリース的な部分をサイト全体のデザインに合わせたテンプレートを用意することで、違和感なく収まるようにしました。
このときの入力インターフェイスは、「aシリーズ」で採用されていたブロック単位での編集という考えを生かしつつ、「a-column」で少し不満に感じていたことなどを解決すべく要望を出して開発してもらいました。
このときの経験は非常に大きくて、今でも私の財産になっていますが、SSIとか.htaccessとか、普通に静的HTMLを扱っているだけでは、あまりお目にかからないようなものにも出会い、調べては試し調べては試しという状況でした。
具体的には見出しと本文、写真を1ブロックとし、それを上下に追加して記事を作成するという方式です。
見出しは色と大きさを選べたり、写真は文字に対して右寄せ、左寄せ、中上、中下と位置を決められます。写真のコメントがALT属性として書きだされる仕様でした。
ファイル名は作成ボタンを押した、年月日-時分秒.htmlというのが自動で付くようになっており、これをキーにして降順で並べてインデックスを作るようにします。表示順を変えたい場合は、ここのファイル名の数字を調整して並び替えるというものでした。

この「Self-Update」はシンプルなものであったこともあり、お客様にも「わかりやすい」「簡単だね」と言ってもらえて、結構な数のサイトに組み込みました。このCMSはデータベースは使わない静的HTMLファイルを書き出し、都度インデックスページも書き換えるというタイプのものでした。
●失敗だった「楽々アップデート」
「Self-Update」がうまく言っていたので、そのまま進めばよかったのに、マクロメディア社(今はAdobeに吸収されてしまってます)から、「Contribute」というWEBサイト更新用のソフトウェアが販売されました。
これを使えば「Dreamweaver」で設定したテンプレート機能を活用しながら、普通にワープロソフトでページを編集できるようになるんじゃないかと期待をしました。そうです過剰に期待をしてしまったのです。これが私のCMS史上、唯一と言ってもよい「黒歴史」になりました。
ページの編集は「Contribute」を使ってWYSIWYG的にやるんだけれども、インデックスページの作成などを自動でつくるのはできないので、その部分は「Self-Update」のように静的記事を読み取って生成するプログラムを作り、それを「Contribute」の内蔵ブラウザで実行させました。新規ページは新規ページ作成プログラムから「Dreamweaver」のテンプレートはあたってはいるが、編集可能領域は空白の空ページを作り、「Contribute」で編集させる…これが「楽々アップデート」でした。
結構、苦労して作り上げましたが、結局数サイトにしか組み込むことはできませんでした。
ちょっと手順がややこしくなってしまって使いにくかったということもありましたが、最大の失敗はワープロソフトのように編集できたために、お客様が勝手気ままに編集してしまい、構造的にも見ため的にもトンデモないページが大量に生成されました。
すんごいデッカイ画像がページの枠を超えてドーンと貼られているだけのページとか、文字の色を使えるだけ使ったような、カラフルなテキスト文字満載のページとか…。目を覆いたくなるようなページが量産されてしまったのです。
この「楽々アップデート」は、早々に見切りをつけました。導入してくださったお客様には申し訳ないことをしました。前述の「Self-Update」や後述の「BLOCK TYPE」で作り変えることをご提案し、格安費用で受けて切り替えました。
●一度はこれで行こうと思った「MovableType」
「Self-Update」にも「楽々アップデート」にも、カテゴリー機能というのがないというのが共通の弱点でした。
そこでいろんなCMSを試し始めたのですが、とりあえずこれで行こうと思ったのが、ブログという言葉を生む起源ともなった、「MovableType」でした。これもデータベースは必要とせず、静的HTMLファイルを書き出すタイプで、テンプレートにするHTMLファイルに、「MovableType」の専用タグを入れればよいので、ノンプログラマである私にも理解しやすいものでした。また当時は一番メジャーなCMSだったと思います。
Perlで動く「MovableType」は、当時主につかっていたファーストサーバで動いたことも重要でした。実はファーストサーバはPHPが使えるようになったのはかなり後発でした。なのでPerlだけで動く「MovableType」は使い勝手がよかったのです。
ただし「MovableType」は、オープンソースではなかったので、1ライセンス5万円が必要でした。お金のない非営利団体にとっては、この5万円が結構大きくのしかかり、なんとか無料でいけるものはないかと試行錯誤していましたが、とりあえずこれといった代替案はなく、一度は「MovableType」をメインにすえようかと思っていました。
当時はWordPressもありましたが、ME版と日本語版(でしたっけ?)の二系統あったこととか、今のようにメジャーな存在でなく、データベースとPHPという組み合わせが、私の理解の範疇を超えていたので、とりあえず私個人のサイトで使ってみるとかして、少しづつ勉強していたという状況でした。
ここまでが前篇です。以降は中編・後編になるか、後編だけになるかは書いてみないとわかりません(^^)
このあと、しばらくメインのCMSとして君臨する、自社開発の「BLOCK TYPE」。
「BLOCK TYPE」の後継として思い切って採用した「WordPress」。
そして「WordPress」とともに、二本柱になりそうな「concrete5」へと進みます。