私のCMS15年史〜concrete5に出会うまで(中編)

MovableType」でいくつかサイトを作っていましたが、やはりカスタマイズをしようと思うと、私の知識やスキルでは不十分だということもわかってきました。なんとかしないといけないなと思っているときに、とあるお客様と雑談をしていました。そのとき「○○○さん(○○○は私の苗字)の会社ではプログラマとか募集していませんか?」って聞かれました。
詳しく話を聞くと、そのお客様のお兄さんがプログラマで就職先を探してるということだったのです。では一度会ってみましょうということになり、当時の社長と一緒に面接をしました。社長は工業大学の出身で、私よりプログラマの力量を判断するには適任だと思ったからです。
面接の結果「なかなかいいんじゃないか」という話になり、まずは契約社員として採用をすることにしました。

いくつか案件を任せているうちに、「Self-Updateに変わるCMSの開発をさせても大丈夫じゃないか?」と思うようになり、彼にそのことを伝えると「大丈夫っすよ」という答えだったので、私が仕様をまとめました。これも私のCMS史上で、ベスト1とも言える楽しい仕事でした。だって自分の欲しいCMSを開発してくれるっていうんですから。

●要望を全部詰め込んだ「BLOCK TYPE」

「Self-Update」の後継のCMS(「楽々アップデート」の記憶は封印)については、とあるお客様の要望を、全面的に取り入れて開発するということは決めていました。
そのお客さまというのは国会議員の方でした。2001年9月29日にサイトを開設してから、毎日欠かさず更新をされ10年間一日も休まずに更新をされました(その後は負担も大きいので連日ではないですが、2日に1回強くらいのペースに)。短文じゃなく結構な分量の記事を毎日書いておられました。
この方は「ムネオハウス」という言葉を初めて使った方で「外務省・鈴木宗男疑惑」の追求で一躍有名になった、日本共産党の佐々木憲昭議員です。どこよりも早く「外務省・鈴木宗男疑惑」に関する情報をまとめてアップするので、この時期はマスコミからのアクセスがすごく多かったことを記憶しています。

最初に佐々木議員にお会いしたときに、その人柄に惚れ込んでしましました。国会議員と言えば「オモテウラ」があって当たり前な感じですが、本当にオモテウラのない方で、若造の私から、真摯に学び取ろうという姿勢がヒシヒシと伝わってきました。この人が毎日更新できる仕組みを考えようって心に誓いました。
佐々木議員は「a-column」を最初に使っていただき、その後「Self-Update」をお使い頂きました。「Self-Update」は好評だったのですが、いくつか要望が出されていました。確かこの4点だったと思います。

  • 予約投稿がしたい
  • ブロックの順番を入れ替えたい
  • 新着リストは自動で作って欲しい
  • カテゴリー分けができるようにして欲しい

特に「予約投稿がしたい」というのが、連日更新をされている方ならではの要望でした。というのも年中無休で活動されている議員も、お正月などは家族と一緒に過ごされる時間を作られます。それまで年末に年明け数日分までのテキスト原稿と写真を用意しておき、どんなときでも1日1回更新作業をされていました。
「できれば年末に記事を投稿しておいて、その日になったら自動で公開されるといいなぁ」って言われたときは、もう「やります!絶対に実現します」って言っちゃいましたね。だって、せめてお正月くらいは、お孫さんと心ゆくまで遊んで欲しいじゃないですか。「おじいちゃんちょっとやることがあるんで、またあとでね」とは、もう言わせません。

それに毎日、結構な分量の記事を書かれる方が苦にならないような仕組みであれば、たいていの人は苦にならないんじゃないかと思ったんです。なので佐々木議員の要望を聞いて新しいCMSを作れば、きっとそれは他の人にとっても使いやすいものになるはずだと思いました。
今回はプログラマに作ってもらえるのでデータベース連動型でPHPで作ることにしました。後々、文字コードがEUCだったとか、新しいPHPやMySQLに対応するのに苦労するんですが、それでもそのときは「これで最新環境だぜ!」と思ってやってましたね。

「Self-Update」のブロックを上下に追加できるだけでなく、順番も変えられるようにしたし、ファイル名の「年月日-時分秒.html」の「年月日-時分秒」の部分を未来の日付にしたら、その日付になったら公開されるという仕様にしました。もちろんカテゴリーも作れますし、新着リストもデータベース連動ですので書き出し操作なしに自動で作られます。
後日、携帯電話でも見られるようなバージョンアップも行いました(ちなみにスマホ対応はしていません)。

こうして出来上がった「BLOCK TYPE」は、狙い通り好評でした。もう定年を過ぎた方に作成したマニュアルを使って講習をして会社に帰ってきたら、もういくつか記事が更新されていたときとか嬉しかったですね。だいたい電話で2~3回操作についての質問が来ると、あとはガンガン更新される方が多かったです。
最終的には115サイトに「BLOCK TYPE」は搭載されました。

名前の「BLOCK TYPE」は、「Self-Update」のように見出し+本文+写真を「ブロック」として積み上げるタイプだといことと、「MovableType」の「Type」っていう言い方がカッコイイなと思っていたので、それらを合わせて命名しました。

●生まれ変われなかった「BLOCK TYPE」

そうこうしていくうちに、PHPやMySQLのバージョンも上がり、それへの対応(特に文字コードをEUCからUTF-8に変える必要性)が求められるようになりました。あわせてスマホ対応も考えないといけなかったですし、一番大きかったのは「WordPress」でいうと「固定ページ」のような時系列に関係のないページの作成と編集の機能が欲しくなってきました。
「BLOCK TYPE」で更新する部分以外は静的HTMLで構成していましたが、「BLOCK TYPE」だけでサイト全体が構築できる、本格的なCMSへの脱皮が求められていました。

しかし残念なことに、それは実現しませんでした。
なぜなら「BLOCK TYPE」を開発してくれたプログラマが退職をしてしまったのです。話せば長くなるので書きませんが、他社に引き抜かれたわけでもなく、次の仕事が決まっていたわけでもなく、出勤状態が不安定になり無断欠勤をすることが多くなりました。いろいろ話し合ったし、家に何度も迎えにいったり、心療内科に一緒に行ったりもしましたが、退職を食い止めることはできませんでした。

ここがプログラマを出自としないディレクターの限界なのかもしれませんが、他人が見てもわかるようなソースコードにさせていなかった(かなりクセの強いコードらしいです)のと、仕様書みたいなものをきちんとまとめさせていなかったので、他のプログラマが見ても、求められる機能を付加するのは至難の業でした。
しかたなく「BLOCK TYPE」はメンテナンスモードに入りました。
開発者であるプログラマとは、うちの部門のスタッフとサイボウズLiveでグループを作って連絡は取れるようにしていたので、バグが見つかったり小幅な機能アップなどは仕事として発注していました。しかしそれも長くは続きませんでした。しかたがないので、メインになるCMSを探すか作るかという判断をせざるを得なくなりました。

●いろんなCMSを調べまくった時期

いろんなCMSを調査しました。「WordPress」はもちろん「XOOPS」「Mambo」「Joomla」「SOY CMS」「Drupal」なんかもかじりました(本当にかじっただけ)。「concrete5」も、このころ少しだけかじったような気もします。
WordPress」以外でいうと「MODX」と「Geeklog」は注目してました。実際に「Geeklog」は2つほどサイトを作ったりもしました。
MODX」はDreamweaverでサイトを管理するような感じでと言われたので注目したのですが、私の頭が追いつかずよくわかりませんでした。「Geeklog」は、日本で「Geeklog」のコミュニティを支える会社が存在しているということが大きかったと思います。

特定のプログラマ個人に依存しなくて済むオープンソースが望ましいが、それをサポートするコミュニティや企業がちゃんとあって欲しいというのがポイントでした。
これは「BLOCK TYPE」で、特定の個人に依存したCMSを作ってしまったことの裏返しでした。
あとはプラグインを含む機能強化がしやすいかとか、カスタマイズはし易いか、更新は簡単にできるかなどがポイントだったと思います。

Geeklog」にするか「WordPress」に狙いを定めるか、かなり悩みました。
何が分岐点だったか、詳しくは覚えていませんが、徐々に「WordPress」に傾いていきました。「Geeklog」を扱えるようにと任命したスタッフが、ちょっと音を上げてしまい「WordPressならなんとか…」と言ったからだったかもしれません。

また各レンタルサーバ会社が、のきなみ「WordPress」のインストーラーを搭載しはじたり、解説本が続々と出始め、これは「WordPress」が来るんじゃないか?と予感させたのも大きかったかもしれません。

●「楽なCMS」か「楽しいCMS」か

実はオープンソースではないですが、もうひとつ注目していたCMSがありました。最終的には採用しなかったCMSなので実名は伏せますが、とてもよいCMSです。デザイン上のカスタマイズや更新のしやすさという点では「WordPress」より全然秀逸でした。ただライセンス料金がかかるのと、プラグイン機能がないので勝手に機能を追加できないなどの問題はありました。開発会社に要望を出したり開発を依頼すれば、そこが作ってくれるので「楽(らく)」ではあります。実際に開発会社さんに来てもらいデモをスタッフ全員に見てもらいました。

それを受けた部門の会議で、私はホワイトボードに大きく「楽」という文字を書きました。
「選択肢は2つ」と切り出し、「更新やデザインカスタマイズも簡単そうだし、機能強化などは開発会社が(お金を払えば)やってくれる。そういう意味で楽(らく)なCMSが、そのひとつ」「もう1つは、デザインカスタマイズはちょっとややこしいかもしれない(Dreamweaverで確認しながらってわけにはいかない)が、プラグイン機能もあり機能強化や自社での開発もできる可能性があるし、コミュニティも盛んでワイワイやれるって点で楽しいCMS」この2つの選択肢があると提示しました。

スタッフの答えは「楽しいCMS」でした。

ということで「WordPress」を「BLOCK TYPE」の後継として位置づけることとしました。

しつこいですが、採用しなかったCMSは、本当にいいCMSですよ。たまたまお金のない非営利団体を相手にしているから、ライセンス料や開発費が確実にかかかることや、開発は自分たちでできないという点で合わなかっただけで、本当にいいCMSなんです!

●コミュニティのパワーを感じる「WordPress」

その後、「WordPress」がメインになっていきました。2014年10月の時点では、のべ50サイト以上をWordpressで作りました(それでも「BLOCK TYPE」の半分以下ですが)。
私も名古屋のWordPressのコミュニティに、どっぷりつかっています。2010年のWordCamp Nagoyaの準備の途中から実行委員になり、名古屋のコミュニティとの関わりも、もう5年が経ちます。

WordPress」にしてよかったと思うのは、本当にコミュティ活動が盛んということです。刺激的な出会いも多いですし。個人的には、ももクロも「WordPress」のコミュニティにいなかったら、ここまで(どこまで?)ハマることもなかったと思います。

「BLOCK TYPE」で作ったサイトを「WordPress」で構築しなおす時のために、コミュニティで知り合った方に、お仕事としてデータベースのコンバートプログラムを作ってもらったり、「BLOCK TYPE」風に「WordPress」の記事を作成できるプラグインなんかも作りました(実はこれ殆ど実サイトで採用されてないんですけど)。
お客様のニーズとして多い、行事予定カレンダーとかも、いろんなプラグインを探して試して実装したり、自分たちで機能を強化してゆける「楽しさ」を実感しています。
自社でベースとなるテーマを作成したころから、サイトの制作もスムーズになり、スピードも格段に上がったように思います。ベーステーマができるまでは「め組」さんのテーマなどもまとめ買いして試したりもしましたが、結局は自分たちでどこがどうなっているのかわかりやすい、自作のベーステーマをメインにしています。
ただ「WordPress」がメジャーになった分、クラッキングのターゲットになりやすくセキュリティ上のメンテナンスとか、バージョンアップとか面倒な点もありますが…。

「WordPressで決まりだね!」なんて、思っていたんですけど、ちょっと新たな展開を考えたときに、もう1つ柱になるCMSが欲しいと思い始めました。

そして「WordPress」のコミュニティを通じて、それに出会うことになりました。それが「concrete5」です。

concrete5」については、後編で…

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