これからのWordPressコミュニティについて

2018年6月14日にWordBenchのサービス終了が発表されました。 そのちょうど一ヶ月前くらいにWordBenchの行動規範が公開されていました。行動規範については、各地のWordBenchに参加する人にとっては戸惑う内容もあり様々な意見があったと思います。そういうことを反映してWordCamp Osakaのコントリビュータデイで行動規範について意見交換する場がもたれ、行動規範に関する議論を行う場がSlackのワークスペース(WordSlack)上に持たれました。 行動規範を議論するのにSlackだけでは難しいということでGitHubを併用して議論する方向になり、GitHubの実装について詰めていただいている途中で、いきなり前述のサービス終了のお知らせが発表されて驚いたというのが正直なところです。 行動規範が決定事項ではなく案として出されて、最初から意見を募集するスタンスであれば違った展開があったのではないかとは正直思いました。しかし実際にそうしようと思うと、大変な労力と時間が必要になると思われますし現実的でないという判断をしてもしかたないと思います。事実Slack上の議論も、すぐにはまとまりそうとは思えませんでしたし、長い道のりになるのかなぁと感じていました(それでもチャレンジしようと思ってくださった方々には感謝です)。

行動規範はよい機会になるはずだった?

行動規範についていうと公開に至る経過や、内容上もいくつか疑問や異論はありました。個人的に特に感じていたのは以下の3点です。

  • 行動規範は運営チームによって公開されたが、なぜ行動規範をつくる必要があるのかなどを含めて最初から、地域のWordBenchを巻き込む形で進めるべきではなかったか。最低でも「案」として出すべきだったのはないか?
  • WordPressコミュニティ運営の原則」(以下、「運営の原則」)では、「罰則のある厳格なルールではなくむしろ理念に近いもの」と言っているのに、それに基づくWordBenchの行動規範に罰則規定があるのが果たしてふさわしいのか?罰則を判定する運営チームが特権的なチームとして機能してしまうのではないか?
  • WordBenchはオンライン上のサービスでありつつも、地域でWordBench(地域名)とすることで、イベントを開催することを主体とした実体のあるユーザグループを表す名称にもなってきており、そういう実体に見合った行動規範であるべきではないか?

こうした点も含めて、行動規範の議論ができればいいと思ったし、WordBenchを地域で始めたとか始めたいと思った人たちが、こうした議論に参加する、もしくは議論を見守る中でWordBenchや「運営の原則」についての理解を深め、自分たちのコミュニティの運営について見直すよい機会になればいいと思っていました。

新しいステップに進むんだと考えよう

ウェブサービスとしてのWordBenchと、その運営チームがこの10年間果たしてきていただいた役割については感謝してもしきれません。 まだ地域コミュニティが未成熟だった時期に、開拓者的な役割を果たしていただいたWordBenchですが、その甲斐もあって各地にたくさんのWordPressコミュニティができてきました。今回そうした実体に即した形でのWordBenchの再定義ではなく、WordBenchを終了させることで次のステップに進もうという提起がされたわけですから、それはそれで前向きに受け止めるべきだと思います。 同時に「運営の原則」に立ち返り、自分たちのコミュニティはどういう形で作っていくのかを考えるときだと思います。 そのことを通じて、コミュニティとその運営を振り返り理解を深める契機になると思います。

Community Team Handbook の翻訳も力に

行動規範の検討や改訂は、WordBenchそのものがなくなるので、これ以上の動きは望めないと思いますが、代わりにグローバルなWordPress.orgサイトにある「Community Team Handbook」の翻訳や日本の実情にあわせた検討が始まると思うので、SlackやGitHubでの議論は継続していけばいいんじゃなかと思います。そのことが、コミュニティとその運営を振り返り理解を深める契機になると思います。 実際の運営にあたっては、地域のコミュニティに関わる人にもわかりやすく、意見の言いやすい雰囲気で進むといいなと思います。

これからのコミュニティの選択肢

具体的には、以下の選択肢があるんじゃないかと思います。

グローバルな「WordPress Meetup」に登録し個別のチャプターアカウント(支部)となる

この場合、支部やコミュニティの名称を「WordPress Meetup(地域名)」とするのが自然かと思いますが、従来通り「WordBench(地域名)」として登録することも許容してもらえるといいかなと思います。WordBenchの運営チームからは混乱するのでWordBenchの名称は使わないでと言われていますが、馴染みも深く地域の中での認知度などからWordBench(地域名)で登録することも可能になるといいなと思います。仮にチャプターアカウント名はWordPress Meetup(地域名)でも、勉強会の名称としてWordBench(地域名)を使うことは許容してもらえればと思います。

▶WordBenchを公式コミュニティやイベントの名称として残す件(2018.6.23追記)

私も以前はWordBenchの名称が使えるようにしたほうがいいのではないかという考えでしたが、考え方が変わりました。 WordBenchを公式コミュニティやイベントの名称としては残さずMeetupに集約させていくべきだという考えに至った理由は下記の3つです。

  1. 日本におけるWordPress公式コミュニティがWordBench10年間の運用を経て新しいステップに入るということを明確にできる
  2. コミュニティ名やイベント名に“WordPress”という文言が入っている方が、これからコミュニティやイベントに触れる人にとってわかりやすい
  3. 2018年9月23日以降、公式コミュニティではないイベントやサービス名にWordBnechの名称が使われてしまった場合、wordbench.orgサイトがなくなるため、それが公式コミュニティなのかどうかというのが区別しにくくなり混乱を招くことになる。2018年9月23日以降にWordBenchという名称を用いるコミュニティやイベントは公式のものではないということを主張できるようにしたい。

WordBenchという名称に愛着や認知度があるということは理解していますが、新しい段階にすすむ局面にきているので、ここは明確な線引きをした方がいいのではないかという考えに至りました。 したがって現WordBench(地域名)を名乗るコミュニティは、「WordPress Meetup」に個別のチャプターとして登録し、名称も「WordPress Meetup(地域名)」もしくは「(地域名)WordPress Meetup」に、変更していくのがよいのではと思います。

「運営の原則」に準拠するが「WordPress Meetup」には登録しない

「WordPress Meetup」は独自のガイドラインがあるので、それに従うのが原則ですが、「運営の原則」にしたがった独自のコミュニティというのも存在可能だと思います。各地で行われている「もくもく会」とか、私も関わらせていただいている「WordPressビギナーズ名古屋」も、それに相当すると思います。この場合もWordBenchの名称を使うことは考えられるとは思いますが、これについてはWordBenchの名称を使うことは避けて、使いたいなら「WordPress Meetup」に登録した方がスッキリするんじゃないかと思います。

「WordPress Meetup」に登録してなくてもダッシュボードに表示される措置を

今までは「WordPress Meetup」には、WordBench自体がひとつのチャプターアカウント(支部)として登録され、各地域のイベントは世話役の方々がイベントカレンダーに掲載要請のあったイベントを個別のMeetupイベントとして作成していただいていたのでダッシュボードに掲載されました。これは結構手間だったと思うし、一部の人に負担がいくのは申し訳なく思いますが、ダッシュボードに掲載されるのか否かは、今までリーチできていなかった人にコミュニティやイベントの存在を知ってもらう上でとても大きな影響があるので、今までのように掲載されるようにしてほしいと願います。 大半の地域コミュニティは、個別に「WordPress Meetup」に登録されることになると予想され、世話役の方々が独自に対応する件数は大幅に減ると思うのでなんとか継続してもらえないかと思います。可能なら申請をして世話役の方が中身を確認してポチッとすると自動でMeetupイベントができるという仕組みがあればいいんですけど…

▶「WordPress Meetup」を名乗らない勉強会もダッシュボードに掲載されるようにしてほしいという件について(2018.06.21追記)

「もくもく会」とか「WordPress Meetup」を名乗らない勉強会であっても、「WordPress Meetup」のアカウントでイベントを作ってもよいそうで、主催する人が道府県単位で登録する「WordPress Meetup(地域名)」の代表者(オーガナイザー)でない場合は、共同オーガナイザーを登録し、その共同オーガナイザーが「もくもく会」とか「WordPress Meetup」を名乗らない勉強会を「WordPress Meetup」上にイベントとして作成すれば、ダッシュボードに出せるみたいです。 「WordPress Meetup」のガイドラインも「WordPressコミュニティ運営の原則」も、内容的には矛盾もないわけだから、「もくもく会」とか「WordPress Meetup」を名乗らない勉強会を開きたい人も納得できるはず。これなら世話役の人が代行しなくてすむし、とてもよい解決策だと思う。よかったよかった。

WordBench名古屋について思うこと

最後に関わらせていただいているWordBench名古屋についてです。 偉そうにWordPressコミュニティについて書いてきましたが、私自身は技術力も語学力もなく、WordPress自体への貢献はほとんどできていません。ただ名古屋でWordCampを開催した2010年からWordPressのコミュニティに関わらせて頂いているだけです。 名古屋では、8年間ほぼ毎月勉強会を開催して来ました。最近は規模も少なくても20人前後、多い時は会場の関係もありますが40人くらいになります。2010年のCamp以後はWordBeachやWordFesなどの100名から300名が参加するカンファレンスを6年開催してきました。毎月の勉強会はOSCに出展した数カ月は初参加の人も増えるし、特にダッシュボードに出るようになってからは、常に初参加の人が来るようになりました。最近の特徴としては60歳以上のシニア層の参加が増え、多い時は参加者の2割以上がシニア層というときもあります。 開発者・制作者などWordPressを仕事にしている人たちだけではない層の参加も増えています。 長年培ってきたノウハウもあり、勉強会もカンファレンスもある程度固まったフォーマットやルーチンに従うことで、安定的な運営ができるようになってきたように思います。しかしその反面ルーチンをこなすだけになってしまい、かつてのような活気やワクワク感が薄れてきたような印象も受けます。 今年のGW前に、FesもしくはCampを開催するかどうかで2回にわたりBenchの運営メンバーで集まって議論しました(ちなみに今は名古屋の運営スタッフとして名乗りを上げてくれている人は14人います)。 そこでもパターン化してしまっている運営についての指摘もありました。そこを改善していこうというのが現在のWordBench名古屋のテーマの一つでもあります。そういう意味ではWordBenchというサービスがなくなり、WordPress Meetupに参加するかどうかということを検討するのは、名古屋のWordPressコミュニティの活性化にとっては、よい機会だと捉えたいです。 個人的には本業の仕事の関係もあって、この5月の終わり頃から、しばらくWordBench名古屋の運営から離れています。 私のような古株(経験的にも実際の年齢的にも)が居座っていると、親子ほど年の離れたメンバーとの関係が上司と部下みたいになってしまい、若い人の自主性やエネルギーを引き出せない要因の一つになっていると思っていたので運営からしばらく離れること自体を好機と捉えて活かしていければと思います。 ただ、そうは言っても細かいことが気になる質(たち)で、ついつい口を挟んでしまい迷惑をかけるし怒られる(笑)ので、今はお口ミッフィー状態にするよう鋭意努力中です。 個人的にはWordPress Meetup名古屋として新装開店するのもいいと思うし、名前はWordBench名古屋のままでも、どちらでもいいとは思います。大事なことはWordPressコミュニティとして、今まで以上に固まったルーチンをスクラップ&ビルドして活き活きと活動できるようになってもらえればいいです。

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